まだ好きです(完)
「団長先輩!本番って学ランっすかー?」

俺等は団長が3年の先輩だから、「団長先輩」と呼んでいる。毎年、応援団は本番「鉢巻」AND「学ラン」という組み合わせで、応援している。だから今年もなのかと聞いてみた。

「まあ、それが応援団の楽しみだし、みんな学ラン着てこいよー。」

うぃーっす。と俺は答えて、応援歌の作成を進めた。

「んじゃあー。できた応援歌振り付けとか考えてなー。」

そういって団長先輩は、ノリノリでアイドルの曲を変えて応援歌にした曲を口ずさんでいた。

「あのー。。」


応援団が活動している1-2に誰かの声が聞こえた。ん………。あれって雛じゃん。
「雛!」

俺は、そういって、雛に駆け寄った。って俺は駆け寄って何するつもりなんだろう?なんて後になって考えた。

「これ。私、制作係なんだけど、応援団のポンポン、出来上がったから使って!」
雛の手には、抱えきれないほどのポンポンがたくさんあって、雛の顔があんまりみれない。

「大丈夫か?」
「うん!平気!」

無理すんなよ、と俺は言うと、雛が持っていたポンポンを預かった。久しぶりだ。雛と離すの。

「応援団って、もう応援歌とか決まった?」

「…んぁー。…一応。」

「そっかー。こっちはさ、障害物競走の道具とか作らないといけないから…もう大変!!!!」

雛はそう言って、汗をぬぐって見せた。大変だなー。俺は雛が疲れていることに、すぐに気づいた。頑張りすぎんなよ。


「………んじゃ、行くね。」


雛は、そういうと、スカートの長さを気にしながら、ぱたぱたと階段を下りていった。長い髪がゆらゆらと左右に揺れる。華奢な体が、よりいっそう可愛さを増した。

「雛。」


「ん?」

「俺の応援ちゃーーーんと聞いてろよ!」

「ちゃーーんと聞いてますぅ~!」

そういって、雛はにーっと笑った。なつ
かしい笑みだった。

「ぜってー、勝つから」
階段の窓にある、太陽の光が廊下に刺さり、綺麗だった。



「駿ー!一回応援通してみるぞー。」

団長先輩の声が聞こえた。俺は、少し大きな返事をして、教室に戻った。雛が作ってくれたポンポンをお守りのように大切に持ち、声をからして、応援に専念した。


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