秘めた想い【短編】
一人病室に残されてまだ覚醒しない頭とボヤけた視界で室内を見渡した。

斜め右にある小さなクローゼットに目をやった。

扉が開けっぱなしになっている。

そしてその中を確認して、彼は思い出した。


そこに掛けてあるのは彼の着ていた喪服だった。


そうだ…妻は死んだんだ。

私を一人残して。

妻は最後まで私の思い通りにはなってくれなかった。

自分の喪服を見つめながら一昨日前の記憶をたどった。
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