秘めた想い【短編】

真実

真弓が病室を出てから10分程経った。

機械音のみが響く個室で夫は思い出した。

そうだ…。

私はあの日、妻の葬儀の日、家に帰宅してから静かにガス栓を開けて風邪薬を大量に飲んだ。


もうこの世では目覚めないはずだった。

あの世で目覚めた時には、目の前には妻が居るはずだった。

しかし私はここで目覚めた。

死にそこなった。

私の願いはまたも叶わなかった。

妻はあの世でも私を受け入れてはくれなかった。
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