秘めた想い【短編】
真弓が病室に戻って来た。

「とりあえずお母さんには電話しといたから。」

彼は何も反応せず、じっと天井を見つめていた。



「お兄ちゃん…。あのね…。貴子さん…。」

真弓は言いにくそうに悲しそうな表情で再び話し始めた。

「思い出したよ…。」

真弓の気持ちを察して話を遮った。



「ごめんね。私、お兄ちゃんがそこまで思い詰めてるとは思わなかった。

気付いてあげられなくてごめんなさい。

あの日、私も一緒に帰れば良かったね。」

彼は無言で真弓を見た。

真弓は泣いていた。

< 26 / 46 >

この作品をシェア

pagetop