狼先輩。

「ことりちゃん、顔真っ赤」


ベッドの上に座る私を見下ろす先輩は、いつものごとく私の反応を見て楽しんでいる様子。


大神先輩がその長い指で、私の頬をくるくると円を描くようになぞる。



……くすぐったい。


「……なんだか、ことりちゃんと初めて会った日と同じだね」


「あのときは、ベッドの上に降ろされませんでした」


「そうだね、あと、今は俺とことりちゃんの関係も、あの頃と違う」


「……はい」



そうだ。


あのときは、赤の他人だった。


だけど、今は恋人同士。


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