ベイビー&ベイビー




 しっかりと聞かれたらしい。

 それにしても真理子を見て、セフレだと一瞬で見抜いた明日香。
 そこに興味が沸いた。


「明日香ちゃんは、どうして彼女がセフレだと思ったの?」

「え?」

「俺の彼女かもしれないじゃない」


 そういうと、一瞬言葉に詰まった明日香だったが、グイッと体を乗り出して俺の顔に接近してきた。


「だって、拓海くんの顔」

「僕の顔?」

「全然甘くなかった」

「……」

「本当に好きならお互いもっと甘い雰囲気になると思うのだけど。違うかな?」

「……」

「それにね、あの素敵な女の人がすれ違いざまに私に言ったし」

「え?」


 あの時のことを思い出す。
 明日香と遭遇して、かなり自分自身動揺していたと思う。
 その後、すぐに九重の第一秘書である松本と話していた。
 きっとそのときに、真理子と明日香が接触したのだと思う。


「彼女、なんていっていたの?」

「……」

「明日香ちゃん」

「内容は言えないけど……。恋人同士じゃないってことは伝わった」

「……そう」


 明日香ちゃんは、こう見ててなかなかに頑固ものだ。
 こうと決めたら、突き進む。

 穏やかで、朗らかだからうまく丸め込めるかと思ったら大違いだ。

 それだけ自分というものをキチンと持っているということなんだろう。
 彼女は雰囲気などに流されるような女じゃないということだけはこの五年間でよくわかったことだ。

 これ以上は真理子の言った言葉を明日香は言わないだろうと考えていると、明日香は仕切りなおしとばかりに再び俺を窮地に追い込んだ。




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