ベイビー&ベイビー




「で」

「は?」

「セフレの条件、だよ? 拓海くん」

「……明日香ちゃんには関係ないことだと思うけど?」


 もう、これ以上詮索しないでねとばかりに貼り付けた笑顔。
 きっと目の前の明日香は付き合いが長い分だけ、俺の心境もわかっているはずだ。
 一瞬、俺の顔を見て怯んだが、敵もさることながら食いついてきた。


「本当に関係ない?」

「関係ないと思うよ?」

「……」


 無言になった明日香。
 やっと諦めたのだろうと楽観していた俺が馬鹿だった。
 明日香は至極真剣な顔をして言ったのだ。


「私、拓海くんのセフレ希望なんだけど」

「は!?」


 思わず立ち上がってしまった。
 ニコニコと笑って俺を見上げている明日香。
 事の重大さを全く分かっていない。

 これだからお嬢様は、と俺は頭が痛くなった。

 可愛い子には旅をさせろ、の前に世間の常識やらをこの子には教えたほうがいいんじゃないか。
 
 しかし、それを含めての「可愛い子には」云々なんだろう。
 じゃあ学習していない明日香が悪いということか。

 これは一度、しっかりと目の前の明日香に説いたほうがいい。
 そのほうがいい。

 今後の明日香の人生が普遍的なものにならないように。
 同期のよしみだ。普通なら、こんな馬鹿放置だ。
 しかし、明日香は同期。
 ちゃんと、しっかりと指導したほうがいい。

 俺は大きくため息をついて目の前の明日香を見つめた。


「明日香ちゃん。セフレってなんだか知っているよね?」

「知ってるよ?」

「どんなことするのかも知っている?」

「知ってるわよ」


 当たり前でしょ? と明日香は怪訝そうに顔をしかめた。
 いや、顔をしかめたいのはこちらのほうだ。




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