LOVE PRINCESS(陽呂&心菜)



だって、顔が近くて。

どうしていいか……わからなかったんだもん。


起き上がった私は、窓の方に顔を向けた。

そこには哀しそうな陽呂の笑顔が映ってて、何だか私も哀しくなった。


「帰らなかったんですか?」

「……傘」

「えっ?」

「傘持ってないんでしょ?」

「えっ……あぁ、それで?」


驚く陽呂をみて言わなきゃ良かったかな? って思った。

こんな事言うなんて私らしくない。


ただ、さっきの優しく流れた時間が……少し素直にさせてくれたのかもしれない。



校門を出て開いた折りたたみ傘が、あまりに小さくてまた、後悔。

学校で借りれば良かった、とか。
1つだと相合い傘だ、とか。


本当、自分で自分が嫌になる。


「心菜さん、濡れますよ」


陽呂との間には人半分の隙間。


「だっ、大丈夫よっ」


また強がり。

私が、こんな事を言うと陽呂は哀しく笑って『そうですか』って言うんだよね。


そして、自分が濡れるのに傘を傾けてくれるんだよね。


だから、私は成長しないのかな。
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