夢花火

桝屋喜右衛門





「日和、この人は?」


「あ、この人はこの店の主人の、朔屋昌宏さん。」


「よろしゅうな、千春はん。」


慌てて私も頭を下げる。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

「沖田はんも、千春はんも、どうぞごゆっくり」


朔屋さんはそう言うと、また店の奥の方に戻っていった。


それと入れ違うように、一人の男が入ってくる。


「あ、桝屋さん。いらっしゃいませ~」


桝屋…?


「おう、日和。今日は、結構客来てるな」

「はい!新撰組の、松林千春さんと、沖田総司さんです。千春、沖田さん、この人は桝屋喜右衛門さんです」


『新撰組』という言葉を聞いた瞬間、桝屋の目が鋭くなったのを、私は見逃さなかった。




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