君にすべてを捧げよう
それから、一ヶ月が過ぎた。
梅雨の切れ間の、からりと晴れた一日。至る所にできていた水たまりもなくなり、久しぶりに遊びに来たつぐみの子供のけんちゃんを喜ばせた。


「めぐるの家って、いいよねー。子供にとってはいい運動場よー」


庭を走り回っているけんちゃんの姿を、つぐみと並んで縁側に座って眺める。
確かに、子供にとっては安全な場所かもしれない。
門を閉めてしまえば外には出られないし、縁側の正面にある池は子供の膝丈までしか水を張っていない。それに、これといった危険な物はないので、安心して遊ばせられるのだ。


「あたしが休みの日には、いつ来てもらってもいいよー」

「そうしたいのは山々だけど、真樹もいるから、難しいのよねー。今、小学校の役員もやってるしさ」


つぐみは、あたしの高校時代の同級生である。
生徒会の副会長もやっていたつぐみは、才色兼備、頭脳明晰の才女だったが、高校卒業と同時に妊娠発覚、そのまま結婚という道を歩んでいる。
今は専業主婦として二人の子供を育てている、よいママさんなのだ。


「役員って大変そうだねー」

「んー、結構やり甲斐あるよ。生徒会の仕事の延長線上って感じだし」

「つぐみ、生徒会好きだったもんね、ていうか、これ美味しい」


コーヒーを飲みつつ食べているのは、つぐみお手製の米粉のロールケーキ。
今年2歳になるけんちゃんは小麦粉アレルギーがあって、小麦粉製品は食べられない。なので、つぐみは子供のおやつは全て手作りを与えているのだ。


「へへー。自信作。米粉のプロと呼んで―」

「うんうん。プロフェッショナルー」


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