君にすべてを捧げよう
「いろいろ、びっくりした……」


リビングに戻り、ソファに身を沈める。
瞳を閉じた。


蓮はどれだけ、美恵さんのことを想っていたんだろう。
その深さを今更に思い知って、心が震える。


あたしが美恵さんに敵うわけが、なかった。
彼女は心をよそに移しても、肉体を無くしても、共に過ごす時間を無くしても、
尚、蓮の心に住んでいる。
誰も奪えない、絶対的な椅子に、彼女は今も座ってるんだ。

きっと、どれだけ躰だけ重ねても、時間を重ねても、あたしはそこには行けないままだっただろう。


「きっつい、なー……」


もう諦めた想い。見切りをつけた心。
だけど、蓮を想ってきた二十数年の時が、それまでの自分が、それを簡単には受け入れられないと言う。
胸の中で暴れて、自分自身を抱きしめて、泣いてる。
自分なりに一生懸命に、必死に想ってきた。それが可哀想だって、泣いてる。

ああ、なんて自分勝手。
蓮を想っていたのは、自分の意思だったのに。
報われなくて、それが可哀想だなんて。

でも、誰にも見られない、自分だけの空間だけだから、許して。


こんな想いをするくらいなら、蓮のことなんて好きにならなければよかったのだ。
大好きな親戚のお兄ちゃん。それだけでいられたら、どんなによかっただろう。
涙で息もつけなくなるような、そんな経験、せずにすんだのに。


美恵さんをお姉ちゃんとして慕って、笑い合って。
そうしたら、未来は何か変わっていたかもしれない。


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