君にすべてを捧げよう
「そう。とうとう言われたの。坂城蓮で作品を発表したい、って。
そうじゃなきゃ、こんなにプライベートを裂いてまで働かないわ」


事故前、蓮は本名で活動していた。
その名前で作品を発表したい、なんて。


「すごいでしょ? ファンとしてもわくわくしてる。きっと、いい作品を書き上げてくれると思うわ」

「ど、どんな話なんですか?」

「ヒミツー。というよりも、読ませてもらえないの。お預け状態ってわけ」


残念そうに瑞穂さんは肩を竦めてみせた。


「これで渡された原稿が白紙だったら大暴れよ。
あー、と。長話しちゃったわね。早く戻らないと、蓮ってばうるさいのよ。召使いじゃないっての」


壁掛け時計を見上げた瑞穂さんが慌てて立ち上がった。


「私もう行くわね。ごめんね、めぐるちゃんも疲れてるだろうに」

「いえ、あの、お話聞かせてくれてありがとうございました」

「ううん、私も、誤解を解くことが出来てよかった。
じゃーね!」


バタバタと慌ただしく、瑞穂さんは出て行った。


「あの服装で、いいのかな……」


結局、キャミソールの上に何も羽織りもしないままだったけど。
まあ、万が一何かあっても、あの人なら蓮を殴り倒してしまいそう、か。。


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