君にすべてを捧げよう
あたしが寂しいと感じていた、広すぎて距離の遠い家。
そこに、蓮はあたしの気配を感じ取っていたって言うの?


ああ、でも。
熱でぼんやりした頭で思う。

あの晩、あたしがあそこにいたことを、蓮はきっと知ってたんだ。
あたしが、蓮を密やかに見つめていることを。

それは、あの時だけ?
昔も、そうだったかもしれない?
あたしが見ていたように、蓮もまた母屋を窺う。そんなことが、あった?

ううん、今更、そんなこと知ってはいけない。
いけないのに。



わかんない、わかんないよ、蓮。
突き放しておいて、どうして今、そんなことを……。





泣き明かした、その明け方。

ポストに鍵が落ちる音を聞いた。



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