君にすべてを捧げよう
涙でぼろぼろになったあたしは、蓮と一緒に家に入った。
リビングに入れば、テーブルの上に蓮の本がある。
それを見た蓮が、「げ」と声を上げた。


「なんでこれがここにあるんだ」

「昨日の夜、瑞穂さんが持ってきてくれた」

「俺には持ってきてないぞ!?」


むう、と顔を顰めた蓮だったが、「読んだのか」とぼそりと聞いた。


「うん。全部読んだ」

「……そう、か。ああ、そういやさっきそんなこと言ってた、な」

「うん」


沈黙。
どうにも気まずい空気が流れた。


「あの、さ。あの、少女のことなんだけ、ど」

「創作だ」

「モデルがさ、その」

「あとがきも創作だ」


早口で言われる。


「ふうん、そっか」

「ああ。じゃなかったら、ここに来ない」

「え?」


見れば、蓮があたしを見つめていた。


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