君にすべてを捧げよう
見れば、蓮があたしを見つめていた。


「祝福なんてできるほど俺は人間が出来てない。おめおめと人に渡せないんだよ」

「そ、か……」


すっかりむくんだ顔で小さく笑えば、蓮が抱き寄せた。
胸に収まったあたしの頭を撫でる。


「でも、悪かった。もっと早く、こうすればよかったんだよな」


首を横に振った。
蓮だって、悩んだのだろう。あの本を見れば、分かる。


「瑞穂が、マンションまで来た」

「瑞穂さん?」

「ああ。明日の朝までに行かなきゃ、めぐるはもう他の男の物になっちまうって」

「そうなの!?」

「幸せになれ、って泣かれた。あいつのお蔭とは言いたくないが、まあ、ちょっとは刺激された」


蓮が、くすりと笑った。

瑞穂さんは、美恵さんの代わりに言うと宣言したのち、「いい加減幸せになって欲しい」と泣いたのだと言う。
蓮は、瑞穂さんが自分の為に泣くなどとは思わなくて、驚いたのだそうだ。


瑞穂さん……。
昨晩の必死だった顔を思い出すと、有難くて涙が出た。

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