君にすべてを捧げよう
「ここに、いてくれるか?」


問われれば、頷く。


「うん。ここでずっと、蓮が書くのを見守ってる」

「そうか」


蕾が綻ぶように、蓮が笑った。


「あ、と」

「なに? 蓮」

「これ」


蓮がポケットから取り出したのは、ネックレスだった。
しゃらりと揺れた鎖の先には、輝くクリスタル。


「これ……あの時の……」

「捨てられなくてな。もう、いらないか?」

「まさか。カエルの精霊が入ってるかもしれないもの」

「そうだといいな」


くすりと笑んだ蓮がそれを首にかけてくれた。
馴染みのある重さのそれに触れると、蓮のぬくもりが残っていた。
持っていてくれたことが、うれしい。





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