君にすべてを捧げよう
――王子さまみたい、が第一印象だった。


出会いは、月イチの合同練習会。
麻美さんから、本店に超絶美形が入ったと言う話は聞いていたけれど、あたしはそれを信じていなかった。
誇大表現は元より、今までの彼女の言う美形は児●清や三国●太郎(生粋の枯れ専)なのだから、信じられるはずもない。
いや、彼らは確かに魅力的だけど、でも世間一般的に言う美形とはちょっとズレていると思うのだ。

しかし、麻美さんは間違っていなかった。


『はじめまして、鏑木智(かぶらぎ・とも)です』

『杯根、めぐるです……』


挨拶を初めて交わしたとき、うっかり見とれた。


年は、あたしより3つ上の29歳。

形のいいパーツが品よくバランスよく配置されている顔立ちは人目をそばだてるほどに綺麗で、しかも男にはもったいないくらい肌が綺麗で、白い。
完璧だと思うその顔には柔らかな笑みが浮かんでおり、不の感情を露にしない。
背は170くらいで、けれど顔が小さくて手足が長いせいか、もっと高く感じてしまう。

物腰も口調も穏やかで優しくて、美人な男の人っているんだなあと感動してしまった。


しかも彼は入店した際にファンクラブ(という名の顧客たち)を連れてきていた。

美容師が移店した際、ついてきてくれるありがたいお客様がたまにいるのだけれど、鏑木さんを追いかけてきた数はハンパじゃなかった。
ちょっと凹みそうになるのだけど、現在あたしの抱えている顧客数ですら優に超えるのだ。

彼女たちは二号店に移動しても足しげく足を運んでくれており、お陰で二号店の売上げは上昇中。
先月は久しぶりに売上目標を達成して、オーナーからご祝儀をもらえたくらいだ。


ちなみに、店内では彼女たちは鏑木ベイビーズと呼ばれている。

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