君にすべてを捧げよう

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  °
   ・

蓮の下で、ぼんやりとあの時のことを思い出していた。

あれからもう、五年。

蓮の中では、何も変わっていないのだろうか。


美恵さんが、羨ましい。
死して尚、蓮に思われる彼女が羨ましくて仕方ない。
彼女に肉体はないけれど、寄り添うことはできないけれど、心はきっと、蓮の一番近しいところにあるのだ。

あたしのように、体だけ触れあっても、心は遥か遠くにあるよりずっといい。
涙がころんと、頬を転がり落ちた。


「蓮」


抱きしめようとしていた手で、体を揺らした。


「ん……む……」

「蓮、起きて。重たい」

「ん……、あ、めぐる?」

「そう。重たいから……、どいてよ」

「ん……、あ……」


蓮が、僅かに体を起こす。
あたしの顔の横に腕をつき、腕の長さだけ離れた距離で、蓮があたしを見下ろした。
僅かな灯りの中、見つめ合う。


「めぐ、る……?」

「なに? どいて」


情けないことに、声が潤んだ。
必死に堪える。泣いていたことなど、蓮に知られたくない。


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