瞬きさえも忘れていた。
「イヤな訳、ないです」

躊躇いがちに答えれば、岩本さんはホッと小さく息を吐き、安心したように目を細めて笑った。


その美麗さに、呼吸が止まるかと思った。


というか……。

息をするのも忘れて、コクッと、喉の奥に詰まっている存在しない何かを呑み込んだ。



岩本さんには、女が生理的欲求ですら忘れてしまうほどの魅力がある……と思う。

そんな彼が、私なんかの言葉に一喜一憂するのが不思議で仕方なかった。



「食べたら? 弁当」


「えっ、あ……」

急に話し掛けられて、あたふたしてしまう。



「俺の顔見てても腹膨れないよ?」



岩本さんの顔に見惚れていたこと――

――バレてたっ!



「岩本さんは……どうしますか?」


「それ半分ちょーだい?」


「えっ?」


「さっきから『えっ』ばっか言ってんな」

顔をくしゃっとさせて笑い、「冗談だって」と。握った拳で私のこめかみをチョンと軽く突いた。


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