瞬きさえも忘れていた。
全身の血液が一気に頭に集まって、尋常でないぐらい熱を持ち、思考が真っ白になった。



「何言ってんですか? あなたなんかに、ヤらせませんからっ。ふざけんなっ!」

思わず怒声を上げて言い返した。けれど、彼の方は平静を保ったままで、表情すら変えない。



私の反論なんかスルーで、

「――って、思わせてる」

と、至極冷ややかに続けた。



「私……が……?」


「そう、『わたし』が」



いくらなんでも酷すぎる。


余りの怒りに下唇を噛み締めた。霞む視界に、一層悔しさが増す。



「泣くの? 図星だから?」

容赦ない言葉が、彼の口から冷やかに落とされ、私の折れた心に更に追い打ちをかけた。



この目の前の冷徹男はきっと、女の涙なんか平気なんだ。

今まで散々泣かせてきたに違いないんだ。慣れているんだ。最低。


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