星の輝く夜空の下で

十七歳



あれから11年…
17歳の春


いまだに額の右側に硝子の破片の傷が残ってる

風がなびいてめくれた額には傷跡が見える


「ねぇ」


声がした


だけどそれは誰も気づかない声だった


夏芽は携帯を取り出す


「何?」


夏芽は春の風が吹く窓の外を見つめながら
電話している


正しく言うと
電話してるフリをしている


「浅岡さんていつも誰かと電話してるよね」

「浅岡さんて昔ヤンキーだったらしいよ。電話の相手は昔の不良仲間らしいよ」

「聞いたことある」

「額に傷があんだって」

「喧嘩して出来た傷が額の傷らしいけどそれ以外の傷は作ったことないらしいよ」

「町で一番強いの?」

「こわっ」


夏芽は気にせずにいた


「どうしたらあんな噂広まるんだろうね」


夏芽の電話の相手


いや電話してるフリをする理由の相手


「勝手に言わせとけばいいよ」


夏芽は幼い頃の無邪気さは消えてクールに磨きがかかっていた


「夏芽、今度お花見行かない?」

「行かない」

「何でー?」

「周りからは一人に見えるからに決まってんでしょ」

「ケチ」


夏芽は周りから見ると電話してるように見える


だけど本当は窓の外の幽霊と話してる

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