禍津姫戦記
「嘘かまことかは知らぬが、この磐座(イワクラ)は神が作ったものとか。もしそなたが神の使いなら、この戦さの先行きを占うてはくれぬか」

 姫夜に伊夜彦のような強い霊視の力があれば、ただちにこの男が何を好み、なにを恐れ、なにを望んでいるのか、知ることもできたろう。だが姫夜の力は、芽吹き始めた双葉のようなものだった。予知はたまさか夢に現れるだけで、神意を問うには精進潔斎し、いくえにも玉垣をめぐらせ光を閉ざした宮に、何日も籠もらねばならなかった。
 それよりは父や母や兄の前で、無心に舞いを舞っている方が好きだった。

(――それでも、ここは神門。占(うら)だけならできるかもしれぬ)

 ふと、そんな思いがよぎった。
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