禍津姫戦記
 姫夜は息をのんだ。

(そうだ……わたしは、逃げて――きたのだった)

 姫夜の父も母も敵の手にかかるより火の中で自害して果てる道を選んだだろう。
 一族の堅固な結界に守られているはずのワザヲギの里に、なぜ兵士が踏み込んできたのか。みな殺されたのか。それとも散り散りになったか。もしかしたら、無事に逃げおおせたのは姫夜だけだったかもしれない。
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