禍津姫戦記
しかし相手の占に占者自身の姿が現れるなど、聞いたことがなかった。
伊夜彦がいれば、即座にその意味を解き明かしてくれただろう。
だが、彼はここにはいない。
ハバキは姫夜の狼狽などおかまいなしに云った。
「神など信じぬ俺がここへ来る気になったのも何かの巡りあわせだ。それともお前には、帰る場所があるのか? よく見れば取るものも取りあえず、逃げてきたというなりだ。キビの軍は容赦ないぞ。兵を殺すにあきたらず略奪し、田畑も焼きつくす。おまえほど美しければ男だろうとただではすまされまい」
伊夜彦がいれば、即座にその意味を解き明かしてくれただろう。
だが、彼はここにはいない。
ハバキは姫夜の狼狽などおかまいなしに云った。
「神など信じぬ俺がここへ来る気になったのも何かの巡りあわせだ。それともお前には、帰る場所があるのか? よく見れば取るものも取りあえず、逃げてきたというなりだ。キビの軍は容赦ないぞ。兵を殺すにあきたらず略奪し、田畑も焼きつくす。おまえほど美しければ男だろうとただではすまされまい」