溺愛MOON
その夜は月明かりがとても綺麗で、打ち寄せる波がはっきりと白く浮き立つように海面にその形を現していた。

私は波打ち際から少し沖に、不思議な光を見た。


一瞬、見間違いかな、と思ったその青い光は波に揺らめいて、ぼうっと消えることなく波間に漂う。

その一帯だけに光の群集が見えるのだ。


何だろう。

私が目を凝らすと、それが人を形どっていることに気づいた。


キラキラと、光の屑がこぼれるように人形(ひとがた)から離れては、波間に消えてゆく。

光が人からこぼれ落ちてるようだった。

それで光の群集の中心を人が泳いでいるのだと分かった。


……人だ。人が泳いでる。


私はその神秘的とも言える光景に興奮して、いつの間にか立ち上がっていた。

その人はこちらに向かって泳いでおり……、やがて光の群集からその人は離れた。
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