溺愛MOON
熱くなる肌と乱れる呼吸はあっという間に嵐の音を私の周りから消し去った。

これがかりそめの一夜でも、その瞬間だけは私はとても幸せで、かぐやとひとつになっていることが嬉しかった。


肌を寄せているかぐやの身体が冷えて、お互いが冷静さを取り戻しても、まだかぐやは私に抱きついたままでいた。

だから真っ暗闇で、できることもなかったけれど私は眠るのが勿体なくて起きていた。


かぐやの呼吸も深くはならなかったから、起きていることには気づいていたけれど、何となく話しかけることもできずに黙ったまま彼の腕に頭を預けていた。

口を開いたのはかぐやの方だった。


「……離れるのは俺じゃない」

「……」


冷たくなったかぐやの身体が少し震えてるようで、私の心までスッと冷えた気がした。


――離れないで。


さっき言った台詞に、答えなんてもらえると思ってなかった。

だから実際にかぐやが核心に近づくような言葉を口にすると、私はどうしようもなく怖くなった。


「俺を捨てるのは香月の方だから……」
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