溺愛MOON
観光案内所を閉める18時になっても中条さんは戻って来なかった。

ここに金目のものなんて置いてないけど、書類とかパソコンがあるから開けたまま出るわけにもいかない。

私は歯痒い思いで窓口だけを閉めて、中条さんのデスクに座って待つことにした。


完全無人の留守番状態。

一人きりだし、やる事なし。


じっと座っていると頭に浮かんでくるのは昨晩のかぐやの台詞。


――俺を捨てるのは香月だから。


何言ってんの……。

私がかぐやを捨てるはずないじゃん。

私にはかぐや以外何もないのに。


別に私は好きな人ができたらその人しか見えないって言う程、恋愛にハマるタイプじゃない。

かぐや以外何もないっていうのは、かぐやしか見えてないんじゃなくて元から何も持っていなかっただけ。


仕事も、恋人も、家も。

私は何も持っていなかった。


帰りたい場所なんて、どこにもない。
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