ソラナミダ
「なんで、涙なんて出るのよ……。」
こんな時に。
こんな場面で…。
どうして泣けるっていうんだろう。
ああ…、そうだ。
この前も…そうだった。
目の前にいるのは晴海くんで…
いつも感情が揺さぶられる。
惑わされる。
「……演技だよ?」
晴海くんが、ぽんっと頭に手を置く。
「……わかってる。」
「………優しいな、わこは。」
「…………。」
晴海くんの横顔は…
相変わらず崩れることなく、画面を捕らえている。
けれどその瞳が……
僅かに潤んでいるように見えるのは、私の気のせいなんだろうか。
それから……
晴海くんは、ちょくちょく家に訪れるようになった。
とはいえ、もちろん約束する訳でもなく、まさに気まぐれ。
博信が来ている時には、彼は来ない。
そして必ず……
来る理由があった。
DVDを観る。
コーヒーを飲む。
酒を酌み交わす。
ダイエット法の直伝。
ラーメン屋への誘い。
それは色々だったけれど、よくよく考えれば友達同士がするような…
そんなことばかり。
間違いなんて起きることもなく、
もちろん起こすこともなく。
そうやって…、月日は流れていった。