レベル・ラヴ
 オレが恋に落ちたのは、王宮の清掃担当のメイド。
 王宮メイドの中でも、清掃担当となると血統的にはかなり最下層の一族になる。

 そんな彼女は突然オレの腕の中に落ちてきた。
 言葉通り、本当に上から落ちてきたのだが・・・。

 王宮の窓から手を滑らせ落ちてきた彼女の名前はエレーナ・フォンデル。
 年齢は20歳。
 
 金の緩やかなウェーブが流れる髪は長く。
 大きな瞳はグレーで、健康そうな肌。
 黒いふわふわした尻尾が揺れる大人しそうなメスだった。

 助けたオレに何度も頭を下げて謝る彼女の声は甘く、解けて少し乱れた金の髪は風にそよぎ、恥ずかしさから潤んでいるグレーの瞳は愛らしく、そんな姿にオレは心を奪われたのだ。

 王宮の中庭を用もなく通ったり、そこで彼女の姿だけを探す毎日。
 そんなオレの様子に気づいたのは親友のゲシュトだった。

 オレの様子から、発情期が来る前の行動だと気づいたのだ。
 すでにつがいの相手がいるゲシュトには今まで散々発情期が来ない事をからかわれていた。
 オレには発情することがどういうことなのかわからなかったし、このままつがいの相手が現れなくても、当主である兄には跡継ぎもいたので問題はないと交わしていたのだ。

 その時も最初はからかわれていただけだった。
 しかしおれはその時、いつものように交わすことが出来ずイライラと言い返し、また会話の中で、何度も言葉に詰まった。
 そんなオレの様子に、すでに発情期を経験しているゲシュトから発情期が来ると聞いたのだ。

 恋をして発情期が来る。
 発情すること事態は問題はない。
 本能的なことだ。

 問題は恋をしたことだった。
 
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