レベル・ラヴ
 恋をすると、普通の発情期は迎えられない。
 発情するのは恋をした相手だけに限られるからだ。

 相手が発情期を迎えていれば自分の血統を考えれば難しくないだろう。
 しかし、相手が発情期を迎えていない場合、2つの道しか残されてないのだ。

 1つはその想いを抱えたまま一人を選ぶ事。
 もう1つは、相手の意思を無視して無理やりつがいとなることだ。

 相手に発情期が来ていなくても子は出来る。
 かなり出来ずらいが。

 子が出来るまで何度も情を交わす。
 恋をすると発情期が狂うので、年中発情できる。
 子が出来難くとも、発情出来ればいずれ子が成せるだろう。

 しかし、相手の気持ちを無視した行為であり、当然、幸せになれた者は殆どいない。
 当然、相手にもいずれ発情期が来るので、その時になれば捨てられてしまう。
 そういう道なので、大抵の者は想いを抱えたまま1人でいることを選ぶ。

 まだ発情していなかったオレは、その時は想いを抱えて一人でいるつもりだったのだ。

 何もわかっていないオレらしい選択。
 オレは自分が発情して、初めて恋をするということがどれほど困難で辛いことかを知った。

 恋する相手を乞う。
 身を焦がし、恋、慕う行為。
 そのことがこれほどわが身を焼き尽くすなんて知らなかったのだ・・・。

 春が来て、発情期に入った。

 どの者もそうだが、発情期に入った者はつがう相手を探したり、また、すでに相手がいる者はその者と情を交わす。
 お互いまったく興味のなかった者同士が、発情期にはつがいになったりするのは普通だ。

 不思議な感覚であるが、発情期に入るということがどんなことなのか身を持って知った者としては納得するしかないだろう。
 とにかくこの身に感じる衝動の大きさに驚いていた。

 もし道ばったでばったり彼女に会うことがあれば、オレは自分が何をするのかわからないと言うしかない。
 春の来るのが遅かった分、衝動が大きいのだろうとゲシュトは言うが、これほど本能に振り回されるとは思わなかった。

 エレーナの姿を求め体は火照り、気がおかしくなりそうな毎日だった。
 
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