〔完〕 うち、なでしこになるんだから
ここで負けてどうするんだ!
 白い雲がたくさんある空。雨は降らなさそうだ。
 この空の下、今日は『全国U-15地域サッカークラブ大会県予選』の一回戦が行われる。
 会場はこの城崎公園のサッカー場だ。

 城崎ドルフィンガールズのメンバーは、朝早くからここに来て、一生懸命準備している。

 試合は正午から始まる。

 それまでに準備して、なおかつ準備体操をしている。

 珠理にとって、この時間がやけに長く感じる。


――ああ、早く過ぎてしまえばいいのに。――

 何度思ったことか。


 それに、今日の試合は億劫に感じる。
 自分のプレーはひどいし、チームに迷惑かけるし・・・。

 この試合で先発に選ばれなければいいなっと思っている珠理がいる。
 いやいやと慌てて打ち消している珠理もいる。
 そんな珠理の様子を空は表しているのか、晴れ間が見えたり、白い雲で覆われたりの繰り返しだ。


 気付いたら、相手チームがサッカー場のすぐ近くにいた。

 向こうも準備体操をしている。

 
――やっと、試合が始まるんだね。――

 とはいっても、時計の針は十時をさしている。 



 
 

 
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