〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 今か、今かと待っていたが、絆の様子に変化はない。

 監督と、ゴールキーパーコーチはひさしの下のベンチに座って、何か話し合いをしている。
 その様子を、絆ばかり見ていた珠理は知らない。


 ぴぃ~♪

「集合。」

『はい。』

 監督が、サッカー場の外に出てきた。
 チームのメンバーは監督をぐるりと囲む。

『お願いします。』

「今から、サッカー場に入って練習ができる。入っていいぞ。」

『はい、ありがとうございました。』

「それと、絆と珠理、ゆう乃ちょっと来てくれ。」

『はい、ありがとうございました。』

 珠理の頭が疑問符で埋め尽くされる。

 絆が呼び出されるのは分かる。キャプテンとして、審判や相手チームに挨拶するから。
 でも、珠理とゆう乃まで呼び出すとは、一体どういうことなのか。


「珠理とゆう乃、もう少し近くに寄ってくれ。」
「はい。」

 恐る恐る、近寄って、

「まだまだ内密だが、ゴールキーパーはゆう乃でいく。」

 珠理の頭にたらいが落ちたような気分だ。


  
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