〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 今は、一対一をしている。

 一対一はいつも珠理は剛溜に負ける。

 さっき剛溜が攻撃で一対一をして、いつものように珠理が負けた。
 あっさり抜かされて悔しかったから、

「もう剛溜!
 もっと頭使って抜かしてよ!」

 そう言って、ため息をついて悔しがる。

「前よりできるようになったから。」

「まだできてない!」
「あっそ。」

 剛溜は珠理にボールを渡す。

「手本見せて。」

 珠理は目を丸くする。
 理屈は分かる。
 でも、実際にやるとなると難しい。

 一対一、つまりドリブルは専門外だからね。

 仕方ない。やるか。


 ボールを所定の位置に置くために、ボールを蹴る。

 一蹴り、一蹴りがなんか元気ない。


――剛溜相手にドリブルとか。絶対負けるだろう。――

 おぉっと、この間の試合で諦めない大切さを再確認したんだ。

 負けない、勝ちたいと思えば、剛溜に勝てる。剛溜が珠理に勝つ確率は百パーセントじゃない。


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