〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「皆、ありがとう。」
「ありがとうございます。」

「そんなことないって。」

 みんな笑う。

 その様子を見ると、やっぱりこのチームが一番だと改めて思う。

 皆、意地悪なことしない。
 いい人たちばかり。

 こうやって素直に喜んでくれる。
 
 スランプに陥っても、皆気にかけ、脱出できるように尽くしてくれる。


 だからこそ、珠理は決めた。

 遠征で、一週間以上チームの練習に参加できない。
 チームにとって、迷惑となるだろう。

 だから、遠征を通じてたくさんのことを学び、チームに還元するんだと。

 そして、来年の春に行われる、全日本女子U-15サッカー選手権で一番いい成績を収めるんだ。

 と同時に、


――『うち、なでしこになるんだから。』――

 幼い時からの夢、今でも追いかけている。

 ここから先は、夢を現実のものにする戦いが待っていると思う。

 遠征が、その第一歩。
 辛い時も、悲しいこととの隣り合わせの毎日になると思う。

 それでも、絶対忘れない。

 うち、なでしこになるんだから。




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