Wild Rock
闇に住まう者


 誰一人として、夜の街を歩いているものなどいない。

 そう。犬や猫でさえも…。

 ポケットに手を突っ込み、冷たい夜風の中歩いているのは、マリアのみ。

 響くヒールの音。

 その音を頼りに、後ろからゾロソロと音も無く近づいて来る謎の物体。

 気づいているのかいないのか、マリアはいつもと変わらない表情でタバコを吸って歩いていた。


 ぐるおおぉう!!


 謎の物体が、単体でマリアに襲い掛かる。

 マリアはタバコを吹き出し、地面を強く蹴って街灯の上に飛び乗った。

 月明かりに照らされた謎の物体は、この街の住人。
 身体は腐り果て、目は無く、所々に骨らしき白いものが見える。

「面倒だねぇ。ネクロマンサーか…」

 頭をポリポリと掻きながら、ため息混じりな声を出した。

 ネクロマンサーからコウモリの翼が生え、壁にぶつかりながらマリアの元へと飛び上がる。

「光り輝くもの 忌むべきもの 総てを在るべき姿へと還し
 主の輝きの名のもと
 汝等に救いの光りあれ!」

 
< 98 / 251 >

この作品をシェア

pagetop