恋なんてミステリアス
 ああ見えても真理恵は結構見た目は気にしないタイプで、内面から入る癖があるから優しい感じの男が良いだろう。年齢は、同年代か少し上。仕事は公務員かサラリーマン。住まいも近いほうがストレスを感じない、まあ、ざっとこんなもんだろう。 
「じやあ、もういいわ。自分で考えるから」

 胃潰瘍も食事療法を基本とした治療により完治し帰宅した千夏は、さっそく市役所勤めの美佐子に連絡を入れてみた。やっぱりこの子は期待を裏切らない。面白いと言うや否や、思い当たるところを狙ってみるという返事を貰えた。

 しかし、これはお遊びとは違う。二度と真理恵が悲しまないような相手をあてがわなくては意味が無いのだ。それには、事前に自分で確認しておくことが絶対条件で、場合によってはキャンセルも必要となるだろう。千夏は彼女に事情を追加した。

 まだ時折、残暑のような熱気が郊外の小さな街を覆い、行き交う車のウインドウに嫌という程照らされ鬱陶しくなる。今日はそんな日でもあった。

 街一番のショッピングセンターは、程よい人の波で秋の訪れを歓迎し、その一角にあるレストランの通りで千夏はぼんやりと人待ちをしていた。 
 
「こんにちは。早かったんですね。写真と同じ感じですぐに分かりましたよ」
 そこには、先日美佐子から見せて貰った男性の顔があった。美佐子は、あんたは写メで良いよね?と無理矢理私を撮り、それを見せると言っていた。 
「こんにちは。初めまして。今日は無理なお願いですみません」
 千夏は軽めに頭を下げた。 
「いいえ、僕も暇な毎日なんで、こんな事でも刺激的なんですよ」
 彼は照れながらそう言ったが、千夏はこんな事でも?と思った。
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