恋なんてミステリアス
 真理恵は、ロビーの奥に向かって歩いた。途中、犬の鳴き声がせわしく聞こえ、何事かと興味と寄せる。それでも鳴き声は止むことを知らないかのようにワンワンと吠え続け、早目に到着してゆったりしようと思っていた真理恵の気持ちを苛立ちに変えた。 
「うるせえなあ。こんなもん持って来るんじゃねえ」 勿論、声には出さなかった。しかし、椅子に座る客の連中もカウンター内の航空会社の係員も同様に嫌気な顔をしている。真理恵は、迷惑しているのが大勢であることに少し安堵した。 まだ吠え続けるバカ犬とその迷惑客を横目にスモーキングルームのドアを開けた。中には若いカップルと一人の中年男性がおり、真理恵は、ドアのすぐ近くの場所を確保した。 
「まるで僻地だよなあ・・・」
 止めよう止めようと思いながらも未だに吸い続けている煙草を取り出すと、ボックスから一本を抜き取り火を点けた。 
 喫煙する場所も急激に減少した最近、自分の居場所も減ったような気がするのは私だけなのだろうか。これが最後と決意しながら一箱ずつしか買わない行動がとてつもなく無駄なことだと知りながらも、やっぱり今でもそうしてしまう。そう言えば、喉の辺りの違和感、何とかならないものか。
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