クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
『ゆず…』
「もういいよ!言い訳なんか聞きたくない!」
騒々しい町の中で、あたしの怒鳴り声が響いた。
チラチラと周りの人の視線を浴びたが、今のあたしはそれどころじゃなかった。
携帯の向こう側から、小さく漏れて聞こえた声。
《…山田先輩?》
香里奈ちゃんの、声。
「山田くんなんか知らない!!そうやってずっと香里奈ちゃんとイチャイチャしてればいい!!」
『ちょ、ゆず…』
ブチッ。
それだけ叫び、乱暴に電話を切った。
瞬間、両目から涙が溢れ出す。
「…うっ…うわぁ~ん…っ!!」
空に向かって、大きく吐き出した。
変わらず滝のような雨が叩き付け、あたしの体を濡らすけど、それが今はありがたい。
だって、嫉妬で醜いあたしの顔と、涙を隠してくれるから。
《香里奈ちゃんとイチャイチャしてればいい!!》
言わなきゃ良かったのに、言ってしまった。
頭が止めたのに、心が止まらなかった。
最悪。最悪。最悪。
最低。最低。最低。
こんなあたし、消えてなくなりたい。もう嫌だよ。本当に馬鹿。
山田くんに酷いことを言ってしまった。
自分勝手に怒って、傷つけてしまった。
もしかしたらあの後に、理由を言ってくれていたかもしれないのに。
「…うえっ…ひっ…」
ここまで自分が嫌になったのは初めてだ。
何であたしはこうなのかな。
いつも勝手に突っ走って、周りの人を巻き込む。
……もう、どうしようもない……。
泣き続けるあたしの上で、空も泣いていた。