キミの前に夕焼け



「けっこう血が出てましたけど、大丈夫ですか…?」


「ああ、大丈夫。俺はこれくらい気にしないのに、みんなが見てて痛いから絆創膏貼ってこい、ってうるさいんですよ」




思わず笑ったら、笑い返してくれる。


男子とこんなに喋れたのは、珍しいかもしれない。




「あの、甘いものとか作ってました?」



いきなり聞かれてビックリした。



「エスパー…ですか?」




「あ、いや、さっき甘い匂いしたから…って、変なこと言ってすいません」





そうだよね、あたしのマカロンは失敗したけど材料の香りとかはするし。



「はい、料理部なんです…一応…」



「一応?」



「料理…下手で…」




「へぇ、食べてみたいかも」



え?

今の話聞いてたのかな?



「料理下手なんです!でも桃…友達はプロ級なので、そっち食べた方がいいですよ?」




あぁ、自分で言ってて情けない…。


もう会えないんだから、嘘でも得意って言えば良かったかな。



って、なんでこんなに色々考えてるんだろう?



< 9 / 298 >

この作品をシェア

pagetop