牙龍−元姫−




―――あ。ねえ、見てあれ。

―――げっ!橘じゃん!最悪ッ

―――なんか1人で笑ってんだけど。気持ち悪っ。

―――気味悪いし。







なんかギャル達がアタシを指差してる。何かを話しているようだ。しかし―――‥あれだな、うん。目が真っ黒だ。動物園にいるパンダ並みに。でもパンダの白い部分も黒いし。パンダ様への侮辱だ!パンダ様はたかが一匹子供が産まれるだけでニュースになると言う高貴な動物なんだぞ!



だいたいそんな化粧しちゃ元の可愛さの面影もない。あと、香水。ありゃあ駄目だな。女の子の匂いはシャンプーか石鹸の香りと決まってるんだから。そう、まさしく桃子ちゃんのような‥‥ッ!







「桃子ちゃんの可愛さはミルフィーユだからね。ぐふふふッ。」









―――ちょっ!まじヤバイって。アイツ。

―――もう行こっ。怖いんだけど!不気味すぎる!

―――つか髪長いし貞子みたいなんだけど。

―――スカートとか膝下じゃん。いつの時代の女?ウケる。

―――ダサすぎ。あれで戒吏様達といるとか許せない。

―――分かる分かる!

―――‥‥〜!?〜。

――‥!






おやおや?さっきまで溜まっていたギャルがどこか行ったみたい。あんなスカート短すぎたら足冷えるだろ。このアタシを見習え!







「学生は勉強をモットーに!校則は守るための校則なんだからね!」






―――‥なんちゃって



最近見始めた学園系青春ドラマのインテリ美香ちゃんのマネをしてみたかったんだ!いやー。照れるなぁ。この台詞。不良男子に言う台詞なんだよ。美香ちゃんは学級委員長だからね。



―――――ん?なんか色んな生徒に見られている気がするような。は!?まさか美香りんマジックか!美香ちゃんの眼鏡をあげる仕草のマネが効いたのかもしれない!みんながアタシにメロメロになる前にここから去らなくては!いざ自販機へ!!



タッタッタ―――…











【模範生(?)橘寿々が去った廊下では】



『び、ビビったぁ。いまのって、橘だよな?』

『あ、ああ。いきなり叫ぶから息止まりそうだったわ』

『つかジュース零れたし』

『勉強をモットーとか言いながら密かにゲームしてんだろ』

『最近では弁当食ってたし』

『優等生だけど優等生じゃないよな』

『まず、牙龍と関わってる時点で優等生なのか問題だろ』

『どうでもいいけど叫ぶ癖直して欲しいんだけど。心臓に悪い』

『確かに』



生徒の皆さん。ただ叫んだ橘寿々に驚いているだけのようでした。惚れる要素は皆無です(完)
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