牙龍−元姫−



自分の失言に気づいたのか、怪我の痛さからか、青白い顔が更に真っ青になり死人のような顔色に変わりました。



“片桐さん”は自分で自爆してしまいました。自分で起爆スイッチを押したのです。





「……う、うわさで」

「嘘はいけね〜よ?噂なんて出回ってるわけねじゃねえか。俺達でさえ今日知ったんだぜ?」

「……だっ、誰に!」

「ん〜?愛して愛して止まない慎さんに決まってんじゃねえの」





醜く足掻く“片桐さん”にに蒼衣さんが告げた“慎さん”の名前。












――――――――総長から話を聞いたは良いものの訳のわからない言葉が飛び交いました。先輩は顔を真っ青にさせて「嘘だ」「最悪だ」「マジかよ」と後悔の念を露にさせていました。



僕にはよく理解出来なかったです。


それは僕だけではなくカン太君も。僕達と牙龍に入ってきた同年代の人は皆そうでした。



そして訳も分からず顔も知らない“片桐さん”を捜すためにバラバラにバイクを走らせて北に向かいました。



話を聞くところすでに蒼衣さんや遼太さんは動いてるらしいです。つい先ほど出ていった空さんも。



北街に向かう途中先輩から“慎さん”の事も“片桐さん”の事も、聞きました――――‥










「し、慎だと!?アイツ裏切ったのか―――――――ガハッ!?」





凄まじい蹴りが“片桐さん”のお腹にのめり込みました。



そのとき僕は思わず目を瞑ってしまいました。



蹴りを入れたのは空さんです。



空さんは幹部で在りながら僕みたいに牙龍には似つかわしくない人だと思っていました。そのときの僕を僕は殴りたいです。



……あの顔つきのどこが牙龍に似つかわしくないんですか。まさに幹部たる者の顔。
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