牙龍−元姫−
「…響子」
「ふふ。ずっと一緒だよ?だってお友達だもん」
「…っそうね」
普段から気の強い里桜は弱味を見せることはない。
涙ぐむ里桜にわたしも泣きそうになった。でもそれは緑川君もだったらしい。本気か態とかは分からないけど。
「感動だねー。里桜ちゃんが弱るところを拝めるなんて俺様付いてるなー。俺様も泣こうーっと。響子ちゃん慰めてー」
「きゃ…っ、」
「離れろ変態が!爆!爆!爆!」
「ちょっ、なにその呪文!里桜ちゃんが唱えてるとマジで爆発しそうなんだけど!」
怖ッ!と正面から抱きついていた緑川君は背後に移動して後ろから抱き締めてくる。
「だいたい里桜ちゃんが泣くのは早いよー。俺様と響子ちゃんの結婚式で泣いて貰わないと。ね?」
「け、結婚!?」
「あー、響子ちゃんのウェディングドレス姿が楽しみだなー。響子ちゃんも純白のドレス着てみたいよね?」
「き、着たいけど…。でも、」
「だよねー。なら俺様と結婚すれば願いは叶うよ。ハワイで挙式のプランも良いかもねー。里桜ちゃんには友人スピーチ頼むよ」
「ええ、分かったわ。響子の写真を密かに集めてたり、偶々と扮して待ち伏せする新郎の緑川流が、どれだけキモい学生時代を送っていたのかを弁舌してやるわ」
「結婚式ぶち壊す気!?」
花嫁に逃げられる!と嘆く緑川君に、
そう言えば公開中の映画で結婚式当日の花嫁さんを連れ去る幼なじみのラブストーリーがあったな…なんて場違いなことを考える。
一度は連れ去れてみたいとロマンチックな夢を見るけど本当に現実で起これば困るよ。式場に戻ったあとの気まずさとか半端じゃないと思う。
「アンタが響子と結ばれるなんて夢のまた夢のような事は起こらないわ。何故なら私がいるからよ。目が黒いうちは阻止してやる」
「生涯を終えたあとも成仏出来なくて幽霊になってそうだよねー。どのみち怪奇現象起こして生前と変わらず邪魔してくるね。しぶとい女は嫌われるよー?」
「……」(ガンガンガンッ)
「それ俺のバイクー!」
私から腕を解くと直ぐさまバイクに駆け寄る。
無言で容赦なく蹴りを入れる里桜に思わず笑ってしまいそうになった。澄ました里桜が八つ当たりって可愛い。