牙龍−元姫−
ぶおおおおおん―――‥!
同時に通りすぎた軽自動車。
里桜の言葉を掻き消すように走り去った。
最後なんて言ったのか聞こえず、聞き返そうとするもの、
里桜は私から身体を離して笑った。
「でも、それでいいの。結局私は響子が離れていかないために足掻くだけなんだから。正義ぶるのも今更だわ。悪役に徹するのも1つの道が開けるかもね。フフッ」
何が何だか分からない。でも里桜が清々しい顔つきをしているから良かったんだと思う。
そしていつも通り輝君と緑川君を見下す。
「まあアンタらがアイツらに味方するなら、すればいいわ。纏めてぶっ潰すだけだから」
「ちょっと待ってくれない?何も俺は味方するとか言ってないし」
「あ、流。居たの?」
「ちょっ、酷ッ!」
「完璧空気だったじゃない」
ガーン!と地面に打ちひれ伏す。
よほどショックだったらしい。
確かに良くも悪くも緑川君は空気と化していた。
「オホホホホ、飛んで火に入る夏の虫ね、輝くん」
「はあ?」
「あらヤダ。私にあれだけ言っておいて気づかないの?アンタらがアイツらに味方すれば、するほど、自分たちの首を絞めるのよ」
輝君も緑川君も意味がわからないと首を捻る。
「響子が東の象徴に戻れば西街のアンタ達との縁は切れるわね」
「さあ響子ちゃん今すぐ西街に引っ越そうか」
すぐさま立ち直った緑川君は焦る。
「ヤバい!東に居る限り接触は免れないじゃん!頻繁に響子ちゃんに逢えなくなるとか織姫と彦星みたいなんだけど!俺様達を引き裂かないでよ!」
「1年どころか一生逢えなくなりそうだけどね」
「ああああ!余計こと言わないで里桜ちゃん!」
「寧ろ逢っちまって和解したら、はえーと思う」
「お前は黙れ。和解したら響子ちゃんが連れていかれるでしょうが。お前だって逢えなくなるの嫌なくせに」
「な…っ!?おおお、おっ、俺は別に…!」
あわてふためく輝君を尻目に里桜に寄る。
グイグイとブレザーを引っ張る私に気づいた里桜は“何?”と笑いかけてくれた。
そう、私はこの笑顔がスキなの。
さっきから、ずっと言いたかった。
建て前でも義務でもないよ。
「わたしは、里桜の傍にいるから」
わたしがこの笑顔を守りたい。