牙龍−元姫−



大道りから離れると小道を通り、路地裏に入った。大道りの賑わいが嘘かのような静けさが広がっている。


少しだけ、ちらほらいる人は皆柄が悪い。話し声がこそこそと耳に入ると人が居ることに安心するわけじゃなく、逆に恐怖心を煽る。





「怖いですか、センパイ?」






本当に怖い。暗いし、ジメジメしてるし、何より柄の悪い人達が怖すぎる。


わたしは千秋の手を握りながら腕に抱きつく体勢で歩く。そんな私にフッと笑った千秋は顔を除き込みながら聞いてくる。


吐息が掛かる近さで少しだけ気恥ずかしくなる。





「す、すこし?」





怖くないなんて嘘っぱち言える筈もなく、怖いなんて情けない事も言えず、間を取れば曖昧な答えになってしまった。語尾にクエッションが付いている。
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