牙龍−元姫−



“憎い”



ゆっくりと、そう告げた少女。



それは何故か、



躊躇しながらもハッキリと言う。








「だって――――里桜を泣かしたから」








――…吃驚したのう。





なにも驚愕したのはワシだけじゃないはず。





「私が傷つけられたって、里桜を哀しませた。里桜が泣いたんだよ?私のせいで…」





裏切られたから憎い訳ではなく、友の涙が理由。この子は心優しい子じゃと心底思った。“里桜”と言う子は幸せものだのう。



顔を顰める響子ちゃんを見てそう思う。場違いにも僅かに心が暖かくなった。



響子ちゃんはやはり“響子ちゃん”じゃった。



ワシは単純明快に“裏切られたから”憎んどると思おた。



じゃが彼女が牙龍を憎しむ理由は違った。



聞いてあっさりと納得出来たのは響子ちゃんだからだの…。人を無意味に憎くむような子ではないのじゃろう。



千秋から聞いとった話を上回るくらい―――――綺麗な子じゃわ。



穢れを諸ともしん。じゃから無意識に人を魅せるのかのぅ。この子が自分の魅力に気づいてたとき、どうなるのか恐くて考えられんわ――――‥。












「…っ…」





桃色が口を噤む。



何かを言おうとしては躊躇して黙ってしまう。



きっと“響子のせいじゃない”と言いたいのじゃろう。






“なら誰のせい?―――自分達のせいじゃないか。”


“言えない。言いたいけど言えない。”


““響子のせいじゃない”なんて言う資格、俺達にはない。”






桃色の中で葛藤が渦巻く、



そのとき、



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