牙龍−元姫−
小刻みに震える少女を見て何を思ったか。
押し黙る少女に黒は語り出す。
「あの頃の俺達は、自分の事しか見えていなかった」
“あの頃”を思い出す、黒色。
顔を歪めたのは、きっといい思い出ではないから。記憶から消したりたいと思うほどの後悔があるから。
「確かに、響子の言い分さえ耳を貸さなかった」
苦虫を噛み潰したように不快さを露にする。
戻れることなら戻りたい、そう言う悔しさが伝わる。
――…未だに磨き続けるコップ。ガラスは磨けば綺麗に消え落とせる汚れ。
じゃが心の汚れや不名誉な汚点は拭えども消えはしない。長い長い月日と年月が必要じゃ。
「たった数枚の写真に躍らされて焦りに振り回された―――――――――‥浅はかだった」
それがわかっているからこそ、自らの浅い考えを悔やむ。
正に後悔先に立たずとはこのことじゃな。
―――‥黒色は一拍置き、溜めてから口を開いた。
「俺達が、憎いか?」
率直に聞いたのう…。
少し肝を抜かれたわい。
コヤツはまどろっこしいことは嫌いな質じゃな。黒のなんの変哲もない言葉に周りの少年らも驚いているようじゃった。
黒か白。リバーシブルのように明白な色を知りたいんじゃろう。
響子ちゃんは伏せめがちな瞳を薄ら開けると、黒を見つめた。
ふっくらした柔らかそうな桃色の唇から、ゆっくりと出る言葉。
「―――憎いよ」
ガリィ…!
飴が砕けた音がした。粉々に。
藍色が加える棒つきキャンディが一瞬にして砕け散った。
滲む甘さが憎たらしいと思いながら飴を舐める藍色を、ワシは知る由もない。