牙龍−元姫−





寿君が野々宮さんを見て、彼女の意見を優先させる。





「響子、どうする?」





寿君を隠しもせずに睨み付ける風見さん。



やはり彼女は凄い。風見さんの鬼の形相に見向きもしない寿君も凄いと思った。





「…う〜ん。体力と技術は大変だし、精神かな?」

「そう?私は精神が一番辛いと思うわ」

「技術は毎年大変だし、私は体力無いし……消去法で精神かなって」





私も風見さん同様精神が一番辛いと思う。毎年次の日は寝込む人が絶えないくらいだ。



技術は毎年“出し物”を見せ合う。所謂パフォーマンス的なもの。しかしそこは流石神楽坂。凝りに懲りまくりの難易度Sクラス。クオリティが半端ない。



体力は人間の限界にギリギリまで挑戦した死と隣り合わせのようなもの。出る人は毎年神無際1ヶ月前からトレーニングに励んでると専らの噂。



やはり神楽坂流イベントは一癖も二癖もある。



私がこの学校に生徒として通っていたなら登校拒否してしまいそう。





野々宮さんが『心』と決めると自然に―――――‥





「なら俺も〜」

「僕も精神で」

「……」





自然と彼らも『心』に行くと言った。



彼女と一緒になるのは彼らにとっては決定事項らしい。



答えはしないが寿くんもどうやら藍原君や七瀬君と同様、精神のようだ。



しかしこの四人が固まって“心”となると、





「きゃあ!私も精神がいい!」「俺も!」「私もー!」





やはり次々と“心”に名乗りを上げていく生徒たち。



私はほぼ全員が“心”がいいと言うのに対して狼狽える。



希望はなるべく汲んであげたいが全員“心”と謂うのは流石に無理だと思った。
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