牙龍−元姫−
因みにこのクラスの主導権は加賀谷さんが握っている。
道理と言えば道理だ。
先生?…ストレスで通院中だから今はいない。余りに不憫すぎる。まぁ元々気の弱い先生だったから致し方ないよな。
この纏まりのないC組に七瀬さんが居てくれれば、と何度も思った。
七瀬さんのように束ねて人がこのクラスには居ないから。
簡潔に言えば牙龍のストッパーが居ないということ。
特に加賀谷さんを止められる人なんて居るわけないし。
だけど同じクラスになって加賀谷さんは意外に常識のある人だとわかった。ほんとに意外だ。
しかし稀に突発的な事を言い出す―――――いまみたいに。
いまも黒板を叩きながら力説している。
因みにいまは神楽坂の作戦会議にと設けられた時間。
当然の如く仕切るのは加賀谷さん。
「いいか!?A組には何としてでも勝たなきゃならねえ!って聞いてんのかそこ!」
目を光らせたかと思えばチョークを握りしめ――――‥
投げた。
「…ッてええ!何すんだ馬鹿野郎!チョークは投げるもんじゃねえんだよ!」
投げたチョークはつまらなさそうに窓を眺めていた大野さんに命中。
不貞腐れているのは、きっと野々宮さんと同じクラスではないからだ。
大野さんに的中したチョークは粉々に砕け散った。
おい。見たか?
粉々になったぜ?
あれは絶対痛い。
いまのは絶対痛い。
まじやべぇよ。
目ェ合わせたら死んじまう。
様々な心の声が聞こえてくる。
ガヤガヤ騒ぎ立っていた教室は、いまのチョーク事件で静まり返った。
誰しもが驚きで肩を竦め、加賀谷さんの怒りに触れないようにする。