牙龍−元姫−

高嶺の華

──────
─────────



走る走る。



綺麗に掃除された廊下を駆ける。大きな足音が廊下に響く。



外に出れば並木道を歩く生徒たち。


自宅へ帰る人や、友達と寄り道する人たちを掻き分けて急ぐ。



ぶつかって、謝り、走る。



ぶつかっては謝って、また走るの繰り返し。



いつもなら花々が美しく咲き誇る花壇に感嘆の息を零すけど、いまの私にそんな余裕はなかった。





「はぁはぁ、」





見えてきた立派な校門。



神楽坂の入り口付近。



少しガヤガヤと浮き足立っているようだ。校門付近が騒がしい。私は息を整え足を止める。



生徒たちは何度も遠慮がちに振り返る。頬を赤らめる人や、凝視する人。反応は多様だ。



ひそひそと話し声がちらほら聞こえる――――――彼女を見て。



いつもの私なら遠慮がちに見る、その他大勢の1人だと思う。



りっちゃんの肩を叩いて、きゃあきゃあと騒ぎ立ててるだろうな。











誰かを待っている彼女。



そよ風が栗色の髪を優しく撫でる。


ふわふわ揺れる髪が美しさを増す。


近づくのさえ躊躇ってしまう雰囲気が彼女にはある。



あまりの神々しさに目が奪われた。
< 517 / 776 >

この作品をシェア

pagetop