牙龍−元姫−
「響子!来てるなら何で言わねえんだよ!」
「…そ、空?」
突然私に飛び付いてきたのは空だった。空はソファーに倒れ込んだ私の上に乗っかり叫ぶ。
「響子来るって知ってたなら俺出掛けなかったし!」
「…ちょっと、空」
「でもケーキ滅茶苦茶買ってきたんだよ!15件ぐらい回ってさ!」
「…ね、ねえ」
「いまから一緒に食おうぜ!な?響子!……っうわ!」
誰かが空の襟を引っ張って私の上から退かす。その勢いに空が驚愕する。私もビックリした。
「何やってる」
珍しく青筋を立て怒っている戒吏が立っていた。戒吏の横には遼と蒼が。よく見れば蒼と遼も戒吏と似たり寄ったりだった。
遼は八重歯を覗かせギリギリ歯軋りしイラついてる。
蒼は舐めていた飴を砕き、ガリィと音を立てた。
「―――そ、そんな怒んなよな!」
渋々ながらも、キレ気味の3人にヤバいと思ったのか私の上から退いた。
“た、助かった。”と胸を撫で下ろす。
流石にあの体制はマズイと思ったから。端から見れば空が私をソファーに押し倒しているように見えなくもない。